この本読んだのこれで4,5回目だ。
デコデコマンさんのウェブログで取り上げてたので久しぶりにまた引っ張り出してみた。
自分の謎解きが模範解答(のようなもの)として成り立つかに最大限の注意を持って読んでみた。
以下、私なりの解答です。ネタバレありです。
まだ作品を読んでない人には見ない事を勧めます。
>>つづき
※ページ数は文庫版のページです。
佃潤一と弓場佳代子、犯人はこの二人のどちらかに絞られているが、なんとなく読んでいるだけでは特定が難しいと思います。
犯人を特定する為には“利き手”が重要な鍵になっているのは読んだ人なら分かる事でしょう。
そこで、金曜日の夜から時系列で追ってみることにしましょう。
金曜の夜、佃が夜11時頃に園子の部屋に来た(P317で供述)ところからです。
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【11時頃】
佃が園子の部屋に訪れます。
佃がとった行動はP277から佳代子が康正に告白した通りです。(※1)
包丁の右側にビニールの断片が付着しているので佃は“右利き”である事が分かります。
【12時(少し前)】
佳代子が園子宅を訪れます。
目的は園子を殺害する為で、練馬区内で発生している連続OL絞殺事件の被害に見せかける為に土足で侵入し、犯行に使うためのビニールロープも用意しています。(※2)
しかし部屋には佃がまだ残っており、佳代子は思い直し犯行を断念する。
佃は午前1時からのアリバイ作りを用意していたので先に部屋を出て自宅に帰ったと言っています。
【12時20分頃】
佳代子が園子の部屋から出る。(P336で供述)
【1時頃〜2時頃】
佃の自宅に同じマンションの住人、佐藤幸広がピザを届けに来ます。
それから1時間ほど(つまり2時くらいまで)2人は話をしています。
1時半に佳代子から佃に電話があり(P245佐藤の証言)、それをきっかけに佐藤は自分の部屋へ帰っています。
この間、園子の部屋の明かりが点いているのを園子の部屋の上の住人が証言している。
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金曜の夜の出来事はざっとこんな感じです。
2時以降は佃、佳代子両人とも自宅にいる事になりますがアリバイはありません。
しかし、園子が自殺したのではない(=佃か佳代子のどちらかに殺された)事は言えます。
P347で康正は園子がとった行動を園子以外の人間が行った場合、園子とは違う痕跡を残すものが存在すると気がつきます。
それは園子の部屋に残された2つの薬袋です。
薬袋は2つとも“右手”で開けられたものなのです。
康正が犯人を特定できたポイントはP290で佳代子が康正の目の前で薬袋を開けた時です。
P348で康正が『答えは出たんだよ 俺はこの目でその瞬間を見ていたんだからな』というのはこの時の事を指します。
では佳代子の利き手はどちらか。 “左利き” という事が言えます。
(佳代子が右利きでは康正は答えが出せなくなるからです。加賀も同じでしょう)
何故、康正は佳代子の薬袋の開け方を見て答えが出たのかというとやはり現場に残された2つの薬袋が両方とも“右手”で開けられたものである事に気がついていたからです。
(園子の通夜で佳代子は右手でペンを持ちますが、園子と同様に筆記具は矯正した右手で書いたとも考えられるので通夜の時点で佳代子の利き手を断定するのはまだ早いようです。)
つまり犯人は 佃潤一 という事が言えます。
包丁を使ったコードの切り方から佃は右利きだと分かります。
(また康正に警察手帳を求める際も右手を出しています)
2時以降、再び園子の部屋を訪れ自殺にみせかけて殺したのです。
作中で佳代子の利き手は左手だ。と明言はされていませんが康正が犯人を特定できた事から逆算すると答えは導き出されます。
なかなか難しかったですが、“犯人探し”ではなく犯人でないのは誰か考えたほうが分かりやすい作品かもしれません。
以上です。長文お付き合いいただきありがとうございます。
参考になりましたでしょうか。
【※1】
テープに録音した佳代子の供述は佃が行った事ですが、鍵をかけて部屋を出たという点は12時少し前に佳代子が部屋に現れるので嘘だと分かります。
【※2】
この“ビニールロープを現場に残す意味”を私は考えました。
佳代子が犯人だとすると、感電死自殺に見せかける為には余計な物だと言えます。仮に捜査が行われた場合の撹乱の為というのも考えられますが、土足であがりこんだ為に残した土などもあり、佳代子にとってはリスクが高いと思われます。
この事からも佳代子は佃と園子の部屋で鉢合わせた際に殺害を本当にあきらめたゆえにロープは残されたのではないかと思いました。